猫カフェの開業を考えはじめると、「何から手をつければいいのか」と立ち止まる方は少なくありません。動物を扱う事業であるうえに飲食店でもあるため、一般的なカフェとは異なる許認可が重なり合う点が特徴です。この記事では、2026年時点で必要な法的手続き、動物取扱責任者の要件、開業資金のコスト構造を整理し、猫カフェ開業までの全体像をわかりやすく解説します。
猫カフェ開業に必要な許認可・資格の全体像

猫カフェを営むには、大きく分けて「動物取扱業関連」と「飲食店関連」の2系統の手続きが必要です。どちらか一方でも欠けると営業できません。下の表で必要な手続きを一覧で確認してください。
| 手続き・資格 | 根拠法令 | 申請先 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 第一種動物取扱業(展示)の登録 | 動物愛護管理法 | 都道府県・政令市の動物愛護担当窓口 | 猫と触れ合わせてサービスを提供する「展示」に該当。事業所ごとに登録が必要 |
| 動物取扱責任者の選任・届出 | 動物愛護管理法 | 同上 | 事業所ごとに常勤職員から専属で選任。要件は後述 |
| 飲食店営業許可 | 食品衛生法 | 所管保健所 | 食事・飲料を提供する場合に必要。施設基準を満たした設備が前提 |
| 食品衛生責任者の設置 | 食品衛生法 | 各都道府県食品衛生協会 | 営業所ごとに1名設置。養成講習の修了で取得可能 |
| 防火管理者の選任 | 消防法 | 所轄消防署 | 収容人員30名以上の場合に必須(スタッフ含む) |
| 開業届(個人事業主)または法人設立 | 所得税法 / 会社法 | 税務署 / 法務局 | 事業形態に応じて選択 |
保護猫を常時10頭以上取り扱う場合、または譲渡に一律料金を設定する場合はさらに業種が追加されることがあります。自治体の窓口に早めに相談することをおすすめします。
第一種動物取扱業(展示業)の登録
猫カフェは、客に料金を取って猫と触れ合わせる行為が「展示」に該当します(動物愛護管理法第10条)。事業所・業種の組み合わせごとに、都道府県知事または政令指定都市の長の登録が必要です。登録は5年ごとに更新します。
登録に際しては、施設の図面・設備の概要・動物取扱責任者の資格証明などを添付して申請します。登録手数料は自治体によって異なるため、開業予定地の窓口で事前に確認してください(具体的な金額は自治体ごとに設定されており、ここでは断定しません)。
動物取扱責任者の要件(2020年改正後の現行制度)

2020年(令和2年)の動物愛護管理法改正により、動物取扱責任者の要件が大幅に厳格化されました。以下の4つのルートのいずれかを満たす必要があります。
ルート1:国家資格保有者
- 獣医師法による獣医師免許を取得している
- 愛玩動物看護師法による愛玩動物看護師免許を取得している
これらの国家資格保有者は、実務経験がなくても動物取扱責任者になれます。
ルート2:認定資格+実務経験
愛玩動物飼養管理士やJKC公認トリマーなど、環境省が認める公平性・専門性を持つ団体の資格試験に合格し、かつ申請する業種と同一の業種での半年以上の常勤実務経験(または1年以上の飼養経験)を満たす必要があります。
認定資格の一覧は環境省ウェブサイトに掲載されており、30種類以上が対象になっています。
ルート3:専修学校等の卒業+実務経験
申請する業種に係る知識・技術を1年以上教育する学校(専修学校・各種学校・高等学校の畜産科など)を卒業し、同業種で半年以上の常勤実務経験(または1年以上の飼養経験)を有することが条件です。
実務経験に関する重要な注意点
- 同一業種での経験であること:猫カフェ(展示)の責任者になるには、展示業または関連業種での経験が必要です
- 常勤勤務であること:アルバイト・パートは算入されません
- 個人での自宅飼育は不可:趣味の猫飼育歴は実務経験として認められません
継続研修(法定研修)
動物取扱責任者に選任された後は、都道府県が実施する動物取扱責任者研修を受講する義務があります。受講頻度の規定は都道府県によって異なるため、開業予定地の自治体に確認してください(東京都では年1回以上の受講が義務づけられています)。研修を受講しない場合は法令違反となります。
飲食店営業許可と食品衛生責任者
猫カフェで飲み物や食べ物を提供する場合、食品衛生法に基づく飲食店営業許可が別途必要です。この許可は動物取扱業登録とはまったく別の手続きで、所管保健所に施設検査を申請します。
飲食店営業許可を取得するには、営業所ごとに食品衛生責任者を1名設置する必要があります。食品衛生責任者は各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習を修了することで取得できます。講習は1日程度で完結するものが多く、栄養士・調理師などの有資格者は講習が免除される場合があります。
なお、既製品を包装のまま提供するだけであれば飲食店営業許可が不要な場合もありますが、ドリンクの提供・軽食の調理を行うのであれば許可が必要になります。詳細は所管保健所に事前相談することをおすすめします。
開業までのステップ

許認可の手続きは順序が大切です。施設の設備基準を満たしていないと飲食店営業許可が下りず、動物取扱業の登録でも施設検査があります。全体の流れを把握したうえで準備を進めましょう。
| ステップ | 主な作業 | 目安の所要時間 |
|---|---|---|
| 1. コンセプト・事業計画の策定 | ターゲット・収支計画・猫の調達方針(保護猫 / ブリーダーなど)を決定 | 1〜2ヶ月 |
| 2. 動物取扱責任者の要件確認・確保 | 自分または既存スタッフが要件を満たすか確認。不足なら資格取得や有資格者の採用を検討 | 状況による |
| 3. 物件の選定・契約 | 立地・広さ・換気設備・施設基準の適合性を確認。建築関係窓口で業態の設置可否も確認 | 1〜3ヶ月 |
| 4. 内装・設備工事 | 猫の飼育環境(キャットタワー・ケージ・換気)、厨房設備(保健所基準)を同時に整備 | 1〜2ヶ月 |
| 5. 許認可申請・施設検査 | 動物取扱業登録(都道府県窓口)と飲食店営業許可(保健所)を並行して申請 | 1〜2ヶ月 |
| 6. 猫の迎え入れ | 健康診断・ワクチン接種済みの猫を確保。保護猫団体との連携も一般的 | 許認可取得後 |
| 7. スタッフ研修・プレオープン | 猫の扱い方・接客・衛生管理手順を研修。オペレーションを最終確認 | 2〜4週間 |
許認可の申請から取得まで各1〜2ヶ月かかる場合があります。開業目標から逆算して、余裕をもったスケジュールを立ててください。
開業資金のコスト項目

開業資金は物件の規模・立地・内装のグレードによって大きく変わります。「いくらあれば開業できる」という一律の金額はありません。まずコスト項目を整理し、自身の計画に合わせて積み上げる方法が現実的です。
| コスト項目 | 内容 | 変動要因 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 敷金・礼金・前家賃・仲介手数料など | 立地・家賃水準・契約条件。都心物件は保証金が家賃の数ヶ月〜10ヶ月分になることも |
| 内装・設備工事費 | 猫専用スペース(壁・床材)・脱走防止扉・換気設備・電気工事など | 居抜き物件なら大幅に削減可能。スクラッチから施工すると数百万円規模になりやすい |
| 猫の飼育環境 | キャットタワー・ケージ・爪とぎ・トイレ・冷暖房 | 猫の頭数と施設面積による |
| 衛生・厨房設備 | シンク・給湯設備・食器消毒機・換気扇(保健所基準を満たす設備) | 飲食提供の範囲による |
| 猫の取得費用 | 保護猫は無償〜譲渡費(ワクチン・医療費の実費)、ブリーダー購入は1頭あたり数万円〜 | 取得方法・頭数による |
| 初期医療費・ワクチン | 迎え入れ時の健康診断・ワクチン・避妊去勢手術 | 猫の状態・頭数による |
| 許認可申請費用 | 登録手数料・施設改修(基準適合のための追加工事)など | 自治体・設備の現状による |
| 運転資金 | 人件費・家賃・光熱費・猫の餌代・定期医療費・広告費など月次固定費の3〜6ヶ月分 | スタッフ人数・営業日数による |
資金調達の手段としては、自己資金に加えて日本政策金融公庫の新創業融資制度、各都道府県・市区町村の中小企業向け融資・補助金制度などがあります。事業計画書の精度が融資審査に直結するため、コスト積み上げの段階から丁寧に作成することをおすすめします。
猫カフェ経営で長続きするために
猫の健康管理と衛生管理
猫カフェにおいて最も重要な運営基盤は、猫たちの健康と店内の衛生です。定期的な健康診断・ワクチン接種・駆虫処置を行い、獣医師との連携体制を構築してください。特に複数の猫が一緒に生活する環境では、感染症の早期発見が欠かせません。
店内の清掃・消毒・換気は毎日徹底します。猫のトイレは頻繁に清掃し、アレルギーのある来店者への配慮としても換気設備は重点的に整備しましょう。
猫の休息時間と来客ルール
猫は休息が必要な生き物です。営業時間中でも猫が自由に退避できるスペースを設け、触れ合いを強要しない環境設計が猫の福祉につながります。来客向けのルール説明も開店前に整備しておくと、猫・来客双方のトラブルを防ぎやすくなります。猫カフェのルールについては猫カフェの基本ルール・マナーも参考にしてください。
集客とコンセプトの差別化
既存の猫カフェと競合する市場では、独自のコンセプトが集客の鍵になります。保護猫カフェとして社会貢献を前面に出す、特定の猫種に特化する、特定のライフスタイルをテーマにするなど、他店と明確に差別化できる切り口を設計段階から考えておくことが長期的な集客に効きます。
SNS を活用した情報発信は、開業前から始めるのが効果的です。猫の成長記録や店内の様子を継続的に発信することで、オープン前からファン層を育てることができます。
よくある質問
Q. 猫カフェ開業に必要な資格は?
A. 必ず必要なのは「動物取扱責任者」の要件を満たすこと(第一種動物取扱業登録の前提条件)です。飲食物を提供する場合はさらに「食品衛生責任者」も必要です。収容人員30名以上の規模では「防火管理者」の選任も義務になります。
Q. 動物取扱責任者になるにはどうすればいいですか?
A. 獣医師免許・愛玩動物看護師免許を持っている場合は即座に要件を満たします。それ以外の方は、①環境省認定の民間資格(愛玩動物飼養管理士など)を取得したうえで同業種での半年以上の常勤実務経験を積む、②動物関連の専修学校等を1年以上かけて卒業し同業種で半年以上の常勤実務経験を積む、いずれかの方法が一般的です。自宅での趣味の飼育経験は実務経験として認められないため注意が必要です。
Q. 飲食物を出さない猫カフェなら飲食店営業許可は不要ですか?
A. 既製品を包装のまま提供するだけであれば不要なケースがありますが、ドリンクの調理・提供を行う場合は飲食店営業許可が必要です。実態に応じて所管保健所に事前相談するのが確実です。なお、動物取扱業(展示業)の登録は飲食提供の有無に関わらず必要です。
Q. 開業資金はどのくらい必要ですか?
A. 物件の規模・立地・内装グレードによって大きく異なるため、一律の金額は示せません。物件取得費・内装工事・猫の飼育環境・衛生設備・運転資金など複数の項目をコストとして積み上げ、最終的に3〜6ヶ月分の運転資金を上乗せした金額を準備目標にするのが一般的なアプローチです。資金調達には日本政策金融公庫の融資制度も活用できます。
Q. 保護猫を扱う場合は追加の手続きが必要ですか?
A. 猫と触れ合わせるだけであれば展示業の登録で対応できます。保護猫の一時預かりで預かり料を受け取る場合は「保管」の登録が、無償ではなく一律料金で譲渡する場合は「販売」の登録が必要になる可能性があります。判断が難しい場合は開業予定地の都道府県窓口に確認してください。
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最終確認日と免責
最終確認日:2026-06-12。記載している法令・許認可の要件は制度改正によって変更されることがあります。とくに動物取扱責任者の認定資格一覧や登録手数料は自治体によって異なります。開業前には必ず都道府県の動物愛護担当窓口・保健所・消防署など関係機関に最新情報を確認してください。

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